昨日の午後歯医者さんで抜歯してもらってから,約30時間が経過しましたが......




ぜんぜん痛くない.ちょっと拍子抜け(いや,痛いのは困るんだけどさ).何しろ歯医者に行く前にかなり恐怖感があって,自分のチキンぶりに情けなくなるほどでしたから.抜歯自体が怖いんじゃなくて,そのあとに襲ってくるであろう痛みがほんといやだったのです.まあ幸いにして麻酔と痛み止めがよく効いたのと(たぶん私は薬が効きやすい体質なんだと思います.人より身体デカいけど),お医者さんがgood jobしてくれたのとで,いまのところまったく問題ない.よかったよかった.


今回の抜歯は左下の奥歯.この歯はいつごろか覚えてないんだけど,いつの間にか内側奥の4分の1が欠けてて,それが飛行機に乗った時の痛みの原因となり,検診の結果かなり悪くなっていることが判明したので抜くことになったというわけ.これはおぼろげな記憶によってるんだけど,たぶん3-4年前に親知らずが動いて歯の地殻変動みたいなのが起きて,奥歯が前より盛り上がってきたときにはすでに欠けてたんだと思う.思えばその時歯医者にかかってればよかったんだけど,痛みもないのでそのまま放っておいて留学に来て,特に問題もなく一年間やっていました.


去年の9月か10月,朝ごはん食べているときにその奥歯でベーコンについてた骨の破片を思いっきし噛んでしまい,それからしばらくその歯が痛んでたんだけど,まあそのうち治るべ,という甘い見通しのもと放っておいたわけです.このとき歯医者にかかっていれば抜歯しなくてもすんだかもしれないのに.私はもともと状況がヤバいかどうかは「死ぬかどうか」というラインで判断する傾向があるため,結果的になんとかなる思考に陥るわけです(考えてみれば,死ぬかどうかで行くとほぼすべての状況がだいじょうぶになっちゃうから,これはかなりヤバい判断基準だということを学びました.32にして).歯のほうは思惑通りだんだん痛くなくなってきたので放っておいたのですが,このあいだに痛みが進行していたんでしょうね.


今年3月に日本に一時帰国して,そのあとに歯が痛くなったことがあったんだけど,それも1-2日で収まったので放っておいたわけです(なんか振り返るとこのお気楽な性格に我ながら呆れるな......).そして9月にAJCで日本に行き,その帰りの飛行機で本格的に痛くなって(あれはヤバかった.座席で数時間身もだえしましたから),オーストリア行きの飛行機でも痛くって,飛行機に乗るたびにこれでは身が持たん,ということでようやく重い腰を上げてお医者さんに行ったわけです.それが10月の上旬.ただイギリスのNHSのシステムは予約までかなり待たなきゃならず,歯医者さんの場合は特に長くなるので(このへんはそのうち書きます),予約から約3週間後の10月25日に初回の検診を受けました.その検診でレントゲン取ってみるとかなり歯の損傷が進行していたので,これは抜かにゃならんねーとなり,次の予約を取って(それも3週間待ち),ようやく昨日,抜歯に至ったわけです.


悪名高いイギリスのNHSですが,幸運なことに今回かかった歯医者は腕はよかったです.20代後半くらいのイケメン,アクセント的にvery well educated Scot.この病院のnew dentistです,というのでちょっと不安でしたが,治療プロセスも丁寧だったし,結果的に何の問題もありませんでした.初回の検診ではざっと歯をチェックした後,「見た感じけっこう進行してますけど,レントゲン(x-ray)撮って確認しましょう」となってレントゲン写真を撮り,それを見てお医者さんが判断し,私も了承し,抜歯に至りました.レントゲンだと他の歯はばっちりエナメル質があって健康そのものなのに,その歯だけ損傷がひどかったので,抜歯はやだけどまあこれはやむを得んかな,という感じでした.


昨日の治療は,まず麻酔をして2-3分してからいよいよ施術開始.ライトから目を保護するためにサングラスみたいなのを掛けさせられましたが,あとは何もなし.見たけりゃ見ることができます(私はチキンなので目を閉じてましたが).奥歯なので口をあんぐり開けて,お医者さんがごっつい(見てないけどわかる)器具でまず歯の周りの肉をとり(麻酔が効いているので痛くないけど感じる),歯をぐりぐりと動かし始めます.全然痛くない.しばらくぐりぐりやってからだんだん佳境に入ってきたようで,いろいろな器具を取り替えて歯を抜きにかかります.痛くないんだけどなんかすごいことになってる感じがして手に汗状態だったのですが,お医者さんが「いいよーヒサシ,いい感じ(You're doing well, Hisashi)」と言ってくれるのがすごく効果があって,(いや,いい感じなのはあなたで,俺はアホみたく口あんぐり開けてるだけなんですけど......)と思いつつもけっこうホッとしましたね.なんというか,ドラマとか映画でよく出てくるアイドルのグラビア撮影で,カメラマンが「○○ちゃんいいよー,そうそう.その表情.もっと脚を......そうそう.次はちょっとお尻を......あーいいね! いいよ!」みたいなシーンで,アイドルが乗ってきちゃうのってこういう感じなんだろうか,と思いつつじっと耐えていると(痛くないけどなんか佳境に入っているのはわかる),いよいよ歯がミシミシっとなって,いよいよ最終段階にあるのがわかりました.しばらく手に汗握って耐えていると,「あ,抜けたな」というのがわかり,お医者さんもそれを告げてくれて抜歯終了.終わった時にはなぜかちょっと涙が出てました.痛くなかったんだけどね.


止血のガーゼをしばらく噛み,施術の結果を告げられて(It went pretty well.),その後は自然治癒に任せます,うまく行ったので大丈夫だと思いますが,問題があったら連絡をください,血が出たら予備のガーゼを噛んでください,数時間はお茶とかコーヒーは控えて,24時間,できれば48時間はアルコールとタバコは避けてください,明日の朝食から食後は塩を入れたお湯で丁寧に口をゆすいでください,大事なのは患部を清潔に保つことです云々の説明を受け,私はガーゼを噛んだままふがふがうなずき(ほーへーほーへー),手術終了.合計20分ちょい.うまくいった感じだけど私としては後に襲ってくる痛みが怖かったので,痛み止め(pain relief)の処方箋(prescription)ないんですか,とふがふが聞いたら,市販のでオーケーですよ,麻酔は2時間ほどで切れるので,適宜痛み止めを飲んでくださいとお医者さん.ほんまかいな,と思いながらもわかりましたーと言って(ほーへ―,へんひゅー),最後に握手して,すべて終了.料金は11ポンド45セント.安いっすね.


帰りに薬局で即効性に優れているという痛み止めを買い(こっちで一番良くみかけるNurofenっていう万能痛み止め薬),家に帰りしばらくじっとして過ごす.なんといってもあの飛行機の中の痛みがまた来るのか,いや今回は抜いたんだからそれ以上かも,という恐怖感で落ち着かなかったのだけど,何もしないよりは頭を使ったほうがいいだろうと判断して,友人に頼まれていた論文のコメント作業を開始.作業を開始するとだんだん集中し,痛みもなくすこぶる経過は順調.麻酔が弱まってきたころに痛み止めを飲み,麻酔がいよいよ切れても特に痛みは感じない.そうこうしているうちに12時になり就寝.寝ているあいだに痛くなって起きたらどうしよう,という不安はあったのだけど,そのままふつうに睡眠に入り,朝までぐっすり寝てました.いつになくヘンな夢(AJCのヘルパー+ジュニアセッションの報告者でジャズバンドの演奏をし私がコメントをつけ,帰りにみんなで池袋の大勝軒にラーメンを食べに行き,いただきまーすというところで目が覚めるという支離滅裂で意味不明の夢)は見たけれど,そのほかは全く問題なし.今日もいちおう痛み止めを飲んだけどまったく痛みはなく,経過は良好そのもの.


こうして私のイギリス歯医者さん体験は無事に終了しました.まあ結果オーライだけど,これからはいちおう気になったら早めにお医者さん行くべきですね.教訓教訓.