mt_kb2010-06-08

先週友達がエディンバラにきていたので,次いでということでハイランドと西海岸に旅行に行ってきた.レンタカーを借りて,1泊2日でスターリング→グレンコー→オーバン→インヴァレリ→ロッホ・ローモンドというルート.


天気はスコットランドとしては異常なほどよくて,終日半袖でOKなくらい.グレンコーの谷の景色に圧倒されて,西海岸ルートの美しさに惚れぼれして,オーバンでシーフードを平らげて(EE-USKというレストラン+George Street Fish & Chip Shopがおすすめ,前者のSeafood platter,後者のfishは激激激ウマ),インヴァレリでCampbell一族のお城を見て,大満足.いい旅行でした.写真はオーバンでの夕日.オーバンはすごくよかった.また行きたいな.

うーん,なんかネットの調子が悪い.繋がんない日があったりしてかなり迷惑.安いからってことで○ァージンにしたんだけどまずったかな……


またまた政治ネタ.火曜と水曜にまとめて新しい庶民院関連の記事がBBCにアップされたんだけど,なんとも面白い.

BBC News - What is the new face of the House of Commons?

BBC News - Notable new faces in Commons

BBC News - Who sits where in the Commons


最初のリンクは新しい庶民院の議員構成のデータで,新人議員,女性議員,黒人あるいはエスニック・マイノリティの議員の数が各党ごとに表示される.さらに私立の学校で教育を受けた議員の数,OxfordとCambridge出身の議員の数などもグラフで示されている.なんかこういうの見るとやっぱり保守党は保守党なんだなあとか,LibDemは保守党と労働党の真ん中くらいなんだなあとか,そういう漠然としたイメージが割と客観的なデータに裏付けられてるのがわかって面白い.「どういうタイプの人たちなのか」を示すのに,まず受けた教育を出すところがイギリスっぽいと思う.State schoolからOxbridgeに行く人たちはともかく,private schoolからOxbridgeっていうコースはこの国ではいろーんなことを説明するのだ.


ふたつめのリンクは新人議員さんで注目の人たちをピックアップしたもの.TV historianのTristram Huntがいつの間にか労働党から立候補して当選してたのを知って驚いた.へー.この国ではけっこう歴史家がメディア露出が多くて,アカデミックな道からそっちに路線を変える人も割といるんだよね.その代表例のSimon Schamaなんかしょっちゅうテレビでてるし.あとはあのロンドン市長Boris Johnsonの弟が議員になってたり.関係ないけどBoris Johnsonって近い将来首相になるんじゃないかと思う.


最後のリンクは庶民院議席の配置.イギリスの歴史(特に政治史かな)を勉強している人には与党と野党の配置はおなじみだけど,連立政権の配置は私は知らなかったので,LibDemが前に来るってのはちょっと驚いた.ちなみにこういう風に与党と野党が正面から向き合う議会ってのは世界的にみてかなり珍しいのだそうだ.Dickinson先生が学部の講義(私がモグったやつ)で言ってた.先生曰く「イギリス議会はヘンテコなんです」.たしかにそうかもしれない.議席の配置とは関係ないんだけど,このあいだ友達とパブで飲んでるときに選挙の話になって,ドイツ人のアンジェラが「なんだってアングロサクソンの国(イギリスとアメリカ)は二大政党制なのかしら.おかしいわよ.ふたつしか選べないなんて不便じゃない? ヨーロッパの国では政党がたくさんあって,連立内閣なんてしょっちゅうあるっていうのに」って言ってた.言われてみればそうだよな……やっぱイギリス(とアメリカ)ってヨーロッパから見たらすごくヘンなんだろうな.


アンジェラの話は置いといて,BBCは毎回選挙の時にはかなり気合の入ったウェブページ・記事を作成してわかりやすく事情を伝えてくれるんだけど,今回はもっとパワーアップしてる感じ.こういうところにイギリス議会政治の伝統みたいなものを感じたりする.日本でもNHKでこういうのやってるんだろうか.

私の予想よりもちょっと早かったBrown首相の辞任の後,昨日の午後には労働党の幹部による「LibDemとの連立は保守党に持ってかれるかも」という発言が伝えられ,その数時間後に保守党とLibDemの連立内閣が誕生しDavid Cameronが首相に就任.このめまぐるしい月・火の展開.たまりませんな.

Brownの辞任はLibDemと労働党の連立の可能性を若干高めたかもしれないけど,LibDemと労働党が内閣を組んでも議席数が315で絶対多数に不足し,そうなると他の少数政党(ウェールズPlaid CymruとかスコットランドのSNPとか)との協調など課題が山積みで,Nick Cleggがずっと言ってた"stable government"とは程遠いものになってしまう.いっぽうLibDemが保守党と組めば絶対多数は確保するから(363議席),少なくとも政策の実行はLib-Labよりはスムーズに行くだろうし,まあ現実的な選択かな,とは思う.CameronとCleggの間でどんな話し合いがあったのかはわからないけど(ちなみにGuardianの撮った写真にCleggの「交渉リスト」が映り込んでおり,その分析がなかなかおもしろい)BBCのわかりやすい政策早見表によると,やはりLibDemの売りである教育,政治制度改革,年金福祉,環境などに意見が反映されている一方,経済,外交,移民政策などのコアなところは保守党がしっかり押さえている.ふーむ.どちらも上手くやったという感じだろうか.まだ組閣の人事はよくみてないからわかんないけど,ここでも駆け引きがかなりあるんじゃないだろうか.


うーん,しかし保守党,Cameronか……Eton育ちでOxfordのBrasenose College卒業というエリート街道ど真ん中一直線,さらにウィリアム4世の血を引くという家柄.そりゃ「あなたはchangeって連呼するけど,まったくchangeを体現してないじゃない(You don't represent change)」というJeremy Paxmanの突っ込みもよくわかる.一般的な評判は,家族思いの若き保守党のリーダー.私もいろいろインタビューとかみたけど,なんというか信用ならない男という感じ.議論しててもはぐらかしやすり替えがすごく多いし,質問にぜったい答えないし,人と話すときも話をするというより自分の言いたいことを言う.サッチャーとの違いがよく言われるけど,政策とかまんま"Old Tory"って感じだし.ちなみに彼の政治ビジョンは"Big Society"と"Compassionate Conservatism".まあお手並み拝見というところだろうか.


ちなみに大学の友達の間では,保守党が超不人気で,それだけはありえない,という感じ.保守党支持を公言したらボコられる勢いで(笑),選挙結果だけではなく新連立内閣に失望・憤慨している友達が相当多い.エディンバラスコットランドだから,ということもあるかもしんないけど,ここの学生,特に院生レベルはスコットランド人なんて少数派だから,それはちょっと違うと思う.まあ学生は反保守党,っていうことなんだと思うけどね.


一方友達のあいだではGordon Brownの人気が高い.まあ卒業生,しかも歴史学科のPhDの先輩だから,当たり前っちゃあ当たり前かな?(そうなるとやはりオクスフォードではCameron人気が高いのだろうか……?)そういえば昨日Dickinson先生と話したときに選挙の話→政治の話→Brownの話になって,「僕はGordon BrownのPhD論文を審査したんだよ」と言っていた.それ以外にもBrownが学部生のときに授業教えたり,接点はかなりあったらしい.当時エディンバラはすごく保守的な大学で,学生による変革運動があったんだけど,Brownはそのリーダー的存在だったようだ.それでも授業はまじめに受けるしそのうえ優秀で,Dickinson先生曰くBrownは"a very active, very radical, but pleasing student"だったらしい.私もBrownは嫌いじゃないから,「人気がないのがちょっと不思議ですよ」って言ったら,「ま,すごくPresbyterianだしね,彼」とのこと(笑).うーん,たしかに.

mt_kb2010-05-07

選挙終了.昨日夜10時の開票からずっとBBCの選挙ニュースを見てたんだけど,夜の3時過ぎになっても100選挙区くらいしか結果が出てなかったのであきらめて寝た.で,今日の夕方になってようやく大勢が判明.最終的に判明した649議席(ほんとは650なんだけど,ヨークシャの選挙区の候補者のひとりが亡くなったので,その選挙区での投票は延期)は以下の通り.


まずはっきりしていることは,労働党の負け.では誰が勝ったかというと,何とも言えない.庶民院の絶対多数は326議席なので,306の保守党は微妙に足りない.保守党陣営はなんとも喜びきれない感じなのではないだろうか.自民党Liberal Democrat)は選挙前の勢いにもかかわらず議席を減らしガッカリ.党首のNick Cleggも"disappointing"と発言していた.


この誰もあんまりハッピーじゃない結果を受けて,失意のLib-Dem党首Nick Cleggが次の内閣組閣のカギを握るいわゆる「キング・メーカー」になったというのはなんとも皮肉かつ面白いところ.Cleggは選挙前から「最大多数を確保した党が組閣すべき」という考えを表明していたしいまもその意見は変えないということなので,すでに保守党党首のCameronとCleggの間で連立の模索が始まっているようだ.ただ交渉決裂の場合……どうなるか.保守党による少数内閣か,労働党と自民の連立か.まだまだ予断を許さない感じ.


今回の選挙は初のテレビ討論があったこともあり(?)非常に盛り上がってて,投票率も前回より増えてるんだけど(前回2005年は61%,今回は65%),そのせいか何と各地の投票所で投票締め切り時間(夜10時)前に長い行列ができ,結局締め切り前に投票できずに追い返されちゃったとか,投票用紙がなくなったとか,前代未聞の珍事が続発.いろいろとニュースが入ったおかけで,BBCのテレビ中継スタジオもかなり活気があった.


日本は日本で選挙,特に衆院選のときは盛り上がるけど,やはり盛り上がり方にかなり違いを感じた.一言で言うのは難しいけど,なんというかイギリスのほうがイベントとして根付いているというか,メディアも報道の仕方に慣れているというか,そういう印象かな.日本だと選挙カーや開票速報なんかのテレビの中継もなんとなく騒々しい,必要以上に騒々しくしてる感じがする.イギリスでももちろん騒いでるし,5年に一度の大イベントだけど,なんつうか興奮の中に落ち着きがあるというか,テレビ見ててもやるべきこと,起こること,注意することなどなどいろいろよくわかってる,熟練してる感じが伝わってくる.そりゃJeremy Paxmanみたいな煽り屋もいるけどね.


例えばテレビを見てても,10時の投票終了/開票と同時に出口調査に基づいた議席予想が出て,40分くらいしてから一番最初の開票が出て(労働党の牙城の一つHoughton and Sunderland South,ここが毎回早い),その得票状況から"Swing"(どれくらい票が移ったか,今回は労働党→保守党)の割合を出して,それをもとに全体的な議席の増減を予想する,という流れだったんだけど,事前の分析ですでに全国的なswingがどれくらいだったら議席がどれくらい保守党に流れるかとか,前回選挙のデータをもとに各党の"Target Seats"(前回票差が少なかった選挙区)を割り出して,そのtarget seatsの結果が大勢に与える影響とか,そういう細かい分析が非常に面白くてわかりやすい.メディアやコメンテータが選挙をよく知ってるというか,そういう感じ.恐らく小選挙区制に基づいた二大政党の争いという政治的伝統があって,その制度的特徴をメディア・国民がよく理解できるくらいに伝統が根付いているということなのだろうか.


でも伝統が根付いている一方で,制度の硬直化とか非効率性といった問題も浮き彫りになってきている.小選挙区制なので政党毎の得票率と議席数が全然一致しないという傾向があり,そのせいで第三勢力や特徴ある少数政党が出にくくなってきている.あとは今回の投票所締め切り時間とか投票用紙の不足とかいった問題についても,BBCに引っ張り出された可哀想な選挙委員会のおねーちゃん(おばちゃん?)が,現在の選挙は結局ヴィクトリア期にできた制度に基づいているので,いづれ問題が生じることはわかっていた(=私のせいじゃない)みたいに発言していた(このロジックは説得力薄いけどね……).まあいずれにしても,投票から議席の配分から,なんかしら改革が必要なのでは,という意見がけっこう出されていた.


んっと長くなったけど,まあ非常に楽しみましたよということです.そして寝不足なので眠いです.以上.