mt_kb2010-05-07

選挙終了.昨日夜10時の開票からずっとBBCの選挙ニュースを見てたんだけど,夜の3時過ぎになっても100選挙区くらいしか結果が出てなかったのであきらめて寝た.で,今日の夕方になってようやく大勢が判明.最終的に判明した649議席(ほんとは650なんだけど,ヨークシャの選挙区の候補者のひとりが亡くなったので,その選挙区での投票は延期)は以下の通り.


まずはっきりしていることは,労働党の負け.では誰が勝ったかというと,何とも言えない.庶民院の絶対多数は326議席なので,306の保守党は微妙に足りない.保守党陣営はなんとも喜びきれない感じなのではないだろうか.自民党Liberal Democrat)は選挙前の勢いにもかかわらず議席を減らしガッカリ.党首のNick Cleggも"disappointing"と発言していた.


この誰もあんまりハッピーじゃない結果を受けて,失意のLib-Dem党首Nick Cleggが次の内閣組閣のカギを握るいわゆる「キング・メーカー」になったというのはなんとも皮肉かつ面白いところ.Cleggは選挙前から「最大多数を確保した党が組閣すべき」という考えを表明していたしいまもその意見は変えないということなので,すでに保守党党首のCameronとCleggの間で連立の模索が始まっているようだ.ただ交渉決裂の場合……どうなるか.保守党による少数内閣か,労働党と自民の連立か.まだまだ予断を許さない感じ.


今回の選挙は初のテレビ討論があったこともあり(?)非常に盛り上がってて,投票率も前回より増えてるんだけど(前回2005年は61%,今回は65%),そのせいか何と各地の投票所で投票締め切り時間(夜10時)前に長い行列ができ,結局締め切り前に投票できずに追い返されちゃったとか,投票用紙がなくなったとか,前代未聞の珍事が続発.いろいろとニュースが入ったおかけで,BBCのテレビ中継スタジオもかなり活気があった.


日本は日本で選挙,特に衆院選のときは盛り上がるけど,やはり盛り上がり方にかなり違いを感じた.一言で言うのは難しいけど,なんというかイギリスのほうがイベントとして根付いているというか,メディアも報道の仕方に慣れているというか,そういう印象かな.日本だと選挙カーや開票速報なんかのテレビの中継もなんとなく騒々しい,必要以上に騒々しくしてる感じがする.イギリスでももちろん騒いでるし,5年に一度の大イベントだけど,なんつうか興奮の中に落ち着きがあるというか,テレビ見ててもやるべきこと,起こること,注意することなどなどいろいろよくわかってる,熟練してる感じが伝わってくる.そりゃJeremy Paxmanみたいな煽り屋もいるけどね.


例えばテレビを見てても,10時の投票終了/開票と同時に出口調査に基づいた議席予想が出て,40分くらいしてから一番最初の開票が出て(労働党の牙城の一つHoughton and Sunderland South,ここが毎回早い),その得票状況から"Swing"(どれくらい票が移ったか,今回は労働党→保守党)の割合を出して,それをもとに全体的な議席の増減を予想する,という流れだったんだけど,事前の分析ですでに全国的なswingがどれくらいだったら議席がどれくらい保守党に流れるかとか,前回選挙のデータをもとに各党の"Target Seats"(前回票差が少なかった選挙区)を割り出して,そのtarget seatsの結果が大勢に与える影響とか,そういう細かい分析が非常に面白くてわかりやすい.メディアやコメンテータが選挙をよく知ってるというか,そういう感じ.恐らく小選挙区制に基づいた二大政党の争いという政治的伝統があって,その制度的特徴をメディア・国民がよく理解できるくらいに伝統が根付いているということなのだろうか.


でも伝統が根付いている一方で,制度の硬直化とか非効率性といった問題も浮き彫りになってきている.小選挙区制なので政党毎の得票率と議席数が全然一致しないという傾向があり,そのせいで第三勢力や特徴ある少数政党が出にくくなってきている.あとは今回の投票所締め切り時間とか投票用紙の不足とかいった問題についても,BBCに引っ張り出された可哀想な選挙委員会のおねーちゃん(おばちゃん?)が,現在の選挙は結局ヴィクトリア期にできた制度に基づいているので,いづれ問題が生じることはわかっていた(=私のせいじゃない)みたいに発言していた(このロジックは説得力薄いけどね……).まあいずれにしても,投票から議席の配分から,なんかしら改革が必要なのでは,という意見がけっこう出されていた.


んっと長くなったけど,まあ非常に楽しみましたよということです.そして寝不足なので眠いです.以上.