私の予想よりもちょっと早かったBrown首相の辞任の後,昨日の午後には労働党の幹部による「LibDemとの連立は保守党に持ってかれるかも」という発言が伝えられ,その数時間後に保守党とLibDemの連立内閣が誕生しDavid Cameronが首相に就任.このめまぐるしい月・火の展開.たまりませんな.

Brownの辞任はLibDemと労働党の連立の可能性を若干高めたかもしれないけど,LibDemと労働党が内閣を組んでも議席数が315で絶対多数に不足し,そうなると他の少数政党(ウェールズPlaid CymruとかスコットランドのSNPとか)との協調など課題が山積みで,Nick Cleggがずっと言ってた"stable government"とは程遠いものになってしまう.いっぽうLibDemが保守党と組めば絶対多数は確保するから(363議席),少なくとも政策の実行はLib-Labよりはスムーズに行くだろうし,まあ現実的な選択かな,とは思う.CameronとCleggの間でどんな話し合いがあったのかはわからないけど(ちなみにGuardianの撮った写真にCleggの「交渉リスト」が映り込んでおり,その分析がなかなかおもしろい)BBCのわかりやすい政策早見表によると,やはりLibDemの売りである教育,政治制度改革,年金福祉,環境などに意見が反映されている一方,経済,外交,移民政策などのコアなところは保守党がしっかり押さえている.ふーむ.どちらも上手くやったという感じだろうか.まだ組閣の人事はよくみてないからわかんないけど,ここでも駆け引きがかなりあるんじゃないだろうか.


うーん,しかし保守党,Cameronか……Eton育ちでOxfordのBrasenose College卒業というエリート街道ど真ん中一直線,さらにウィリアム4世の血を引くという家柄.そりゃ「あなたはchangeって連呼するけど,まったくchangeを体現してないじゃない(You don't represent change)」というJeremy Paxmanの突っ込みもよくわかる.一般的な評判は,家族思いの若き保守党のリーダー.私もいろいろインタビューとかみたけど,なんというか信用ならない男という感じ.議論しててもはぐらかしやすり替えがすごく多いし,質問にぜったい答えないし,人と話すときも話をするというより自分の言いたいことを言う.サッチャーとの違いがよく言われるけど,政策とかまんま"Old Tory"って感じだし.ちなみに彼の政治ビジョンは"Big Society"と"Compassionate Conservatism".まあお手並み拝見というところだろうか.


ちなみに大学の友達の間では,保守党が超不人気で,それだけはありえない,という感じ.保守党支持を公言したらボコられる勢いで(笑),選挙結果だけではなく新連立内閣に失望・憤慨している友達が相当多い.エディンバラスコットランドだから,ということもあるかもしんないけど,ここの学生,特に院生レベルはスコットランド人なんて少数派だから,それはちょっと違うと思う.まあ学生は反保守党,っていうことなんだと思うけどね.


一方友達のあいだではGordon Brownの人気が高い.まあ卒業生,しかも歴史学科のPhDの先輩だから,当たり前っちゃあ当たり前かな?(そうなるとやはりオクスフォードではCameron人気が高いのだろうか……?)そういえば昨日Dickinson先生と話したときに選挙の話→政治の話→Brownの話になって,「僕はGordon BrownのPhD論文を審査したんだよ」と言っていた.それ以外にもBrownが学部生のときに授業教えたり,接点はかなりあったらしい.当時エディンバラはすごく保守的な大学で,学生による変革運動があったんだけど,Brownはそのリーダー的存在だったようだ.それでも授業はまじめに受けるしそのうえ優秀で,Dickinson先生曰くBrownは"a very active, very radical, but pleasing student"だったらしい.私もBrownは嫌いじゃないから,「人気がないのがちょっと不思議ですよ」って言ったら,「ま,すごくPresbyterianだしね,彼」とのこと(笑).うーん,たしかに.