Scotch Malt Whisky Society

The Scotch Malt Whisky Society

ブログではあまりネタにしていなかったけど,実は私はウィスキー党である.3年くらい前からハマって,日本にいたころは自分の部屋にボトル3-4本置いて夜な夜なちびちび楽しんでいた.なんでネタにしていなかったのかというと,スコットランド史やっててウィスキー好きなんていかにも過ぎてちょっとなぁ......という配慮(?)から.まあでもいいよね.事実なんだし.


プロフィールにも書いているように,スコットランドに来たからには本場のシングルモルトウィスキーを堪能......かと思いきや,酒税のせいで値段が高いので,日本にいた頃よりは飲んでいないと思う.とはいえ,部屋にはアードベックの10年とラガヴリン16年があって,たまーに飲んでいるけどね.ちなみに好みのモルトはスペイサイドの甘くて華やかなものと,アイラのクセの強いもの.最初にハマったのはグレンリヴェットラフロイグ.以上前置き.


で,昨日の夜,こちらに来てからひょんなことで知り合いになってお付き合いさせていただいている河村耕平さんという方に誘っていただいて,The Scotch Malt Whisky Societyのバーに行ってきた.河村さんはエディンバラの経済学部でLecturerをやられている方で,オクスフォードの修士と博士で最優秀論文賞を受賞したという超秀才である.すげー(ウェブサイトはこちら).もちろん(?)早稲田出身! すばらしいじゃないか都の西北


このソサエティは年間100ポンドの会費を払えば会員制のバーを利用でき,あとはなんかテイスティングのイベントやら何やらも参加できるという会らしい.バーはエディンバラではNew TownとLeithにあるらしく,昨日我々が行ったのはNew Townのほう.Georgianの雰囲気のいい建物の中にソサエティのレストランとバーがある.でまあこのバーでパブ飯を食いながらウィスキーをいただくわけだが,ここに置いてあるウィスキーがタダものではないのだ.


普通に市販されているウィスキーはブレンデッドとシングルモルトとあるわけだが,ブレンデッドとは名前のとおりいくつかの蒸留所のウィスキーをまぜて作ったもの.シーヴァス・リーガルとかヴァランタインがこれにあたる.シングルモルトとは,スコットランド各地に点在する蒸留所が自分のところで作ったウィスキーをそのまま売るもので,それぞれの地域や蒸留所によって味や香りに個性が出るのが特徴である.日本で有名なのはラフロイグボウモアマッカランくらいかな.ふつうお店で買えるボトルのシングルモルトウィスキーは,樽から出した原酒を混ぜ合わせてろ過し,さらに加水してアルコール濃度や味を調整して出荷する.このおかげでほぼ均質なシングルモルトウィスキーが生まれるわけだ.


このソサエティのバーがすごいのは,置いてあるウィスキーがすべて樽から直接ボトリングしたもの,したがって他の樽との混ぜ合わせ,ろ過,加水を施していないもの,というところである(シングルカスクのさらにカスクストレンクスという).こういう原酒をボトリングしたものはなかなか売っていないし,売っていても非常にお値段が張るので,院生程度では手が出せない.そういう貴重かつおいしいウィスキーを飲ませてくれるバーなのである.料理も下のしっかりしたレストランの厨房で作っているので,イギリスらしからぬおいしさ.いやーうまいっすねー,とかいいながら飲んで食ったわけだが,なんと我々が行った火曜日はすべてのウィスキーが値段が均一というこれまたうれしい日だったもんだから,いつもなら値段が3倍くらいする30年オーバーのウィスキーなんかも注文して,ウィスキー談義に花が咲いたわけだ.「この香りは......あーこれがシェリー樽仕上げの香りか」「味は......うーんすごくフルーティな甘さが出てる」「これは......クレームブリュレと異常に合いますね!」「いやーこの33年のはうまいね! 次いっちゃう?」みたいな.いま思い返すと笑えるな.楽しかった.


まあそういう話のほかに大学関連の話もしたわけで.イギリスの大学が置かれている状況とか,日本の大学との違いとか,イギリスにおけるPhDの位置づけの変化とか,学生がサヴァイヴしていくのに大事なこととか.イギリス(というか西欧か)のアカデミック・ジョブマーケットの中を勝ち抜いてきた人の言うことだからほんと勉強になる.


いやーでもこのソサエティのバーはほんといいわ.日本にいたらこんなウィスキーの飲み方は絶対できないな......100ポンド払って会員になっちゃおうかと一瞬思ったくらい.でもこんな場所があったらしょっちゅう通って勉強できなくなっちゃいそうだから,やめといたほうがいいわな.断念.でもひとつ目標ができた.いいPhD論文を書いて,ポスドクでもなんでもいいからスコットランド,願わくばエディンバラに残って,このソサエティの会員になって足しげくバーに通う! 動機は不純だけど,これ目標.がんばろ.