エディンバラ珈琲事情 part 2

雪は雨になり,午後には雨も上がって青空ものぞいてきた.っていうか晴れた.なんとでたらめな天気.さすがは「一日で一年の気候を経験できる」と言われるスコットランドだけのことはある.


気温は低いものの晴れていて気持ちがいいから,昨日の余勢を駆ってコーヒー屋さん探しに出かけた.平日ではなかなかできないからね.実は昨日帰ってからネットでいろいろ調べてみると,エディンバラにも3-4店ほど試してみる価値のありそうなコーヒー屋があったのだ.そのうち一番期待できそうなお店,Artisan Roastに行ってみた.


Artisan RoastはNew Townの東側,Broughton Streetにある.質のいい食料品店やワイン店などに加えて,パブやカフェ,夜には(いわゆる若者向けの)クラブも開く比較的賑やかな通りだ.近くにはPhD仲間のアリソンとジェーンが住んでいる.少し歩くとすぐに店が見つかったのでドアを開けてみると,豆を焙煎中のマスターらしき若い男性が"Hi, how ya doin?"と話しかけてくる.なかなかフレンドリーな店だ.狭い店内には大きな焙煎機が置いてあり,壁はコーヒー豆の麻袋を張り付けている.このゴミゴミした感じは私が柏にいたとき足しげく通っていたM's Companyに似てなくもない.


すみません豆買いたいんですけど,というとマスターの兄ちゃんは豆の用途と私の好みを聞いてくる.エスプレッソやカフェプレスではなくてフィルターを使って淹れること,あっさりした甘みのある味が好みなことを伝えると,コロンビアのスプレモを勧めてきた.他にもいくつか勧めてきたのだが,最初に勧めてくれたスプレモを買うことにした.若い女性の店員が豆を用意してくれているあいだにいろいろと聞いたところによると,この店は去年の10月に開店したということ,マスターはニュージーランド出身で6年間実家の店を手伝って,ここが彼のはじめての店だということ,エディンバラを選んだのは以前エディンバラに住んでいたことがあって,ここのコーヒーはひどいので自分で作ることにしたこと,などを話してくれた.


日本人だと伝えると,日本のコーヒーはすごいでしょ,世界中の最高級の豆はほとんど日本に行っちゃうからねー,とマスター(そうなんです.日本は世界のコーヒー市場で良質の豆のかなりの量を買い占めていており,ヨーロッパの小売業者にはほとんどいい豆は回らないのだそうです).あまりいいことじゃないと思いますけどね......と言うと,少なくとも日本人にとってはいいことでしょ,とマスター.まあそんな感じで話していたんだけど,やはりエディンバラのコーヒー文化のレベルの低さに話は落ち着いた.マスターいわく,少なくともエディンバラ市街区では自家焙煎店はないそうだ.


こんな感じで立ち話をしている間にもお客さんが次々と入ってきて,狭い店内はあっという間に混雑してくる.繁盛している証拠だ.しかもみんな常連さんっぽい.エディンバラにもちゃんとしたコーヒーを求める人がいたのか,とちょっと驚く(まあこれは偏見かな).そうこうしているうちに豆ができあがって,会計を済ませて店を出た.コロンビアスプレモ100gで£2.50也.価格も良心的だ.フラットに帰って淹れてみるとよく膨らみ,豆が新鮮だとわかる.そしてできあがったコーヒーのおいしさに感動.日本で一時帰国したときに飲んで以来だから,4ヵ月ぶりのまともなコーヒー.あっというまに飲み干してしまった.それにしても,まさかエディンバラでおいしいコーヒーに出会えるとは思わなかったよ......




Artisan Roast
57 Broughton Street
Edinburgh, EH7 4LA

単純なもので,こういう思いがけないいいことがあると人生うまく行ってるような気がしてくる.この調子でリサーチもうまくいく! といいな.